レトロスペクティブのファシリテーションで心掛けていること
Specteeのエンジニアチームでは、プロダクト開発にスクラムを採用しており、Sprintごとに「ふりかえり」を行なっております。
今回は、ファシリテータを務める私が実践している、ふりかえりの進行方法や心掛けていることをご紹介します。
※ スクラムやそれに関連する用語の説明は省略いたしますが、ご容赦ください。また、「付箋」と書きますが、弊社ではオンラインでMiroを使用してふりかえりを行なっています。
ふりかえりのアジェンダ
私が行っているふりかえりのアジェンダを以下に示します。
ストーリーポイントのふりかえり(10分): チームで達成したストーリーポイントをふりかえります
今回のスプリントで取り組んできたTryのふりかえり(20分): 前回決めたTry(改善案)がどうだったかをふりかえります
テーマ出しと優先度の決定(15分): 今回のスプリントで起きた掘り下げたい出来事をメンバー全員で付箋に書き出したのち、今回取り扱うテーマを決めます
起きた出来事の掘り下げ(1時間〜2時間): 各テーマに対して課題や感想などを話します
次のSprintで取り組むTryの決定(15分): 掘り下げた内容をもとに今スプリントのTryを決めます
ふりかえりのふりかえり(5分): 今回のふりかえりをふりかえります
ステップ1:ストーリーポイントのふりかえり
ストーリーポイントのふりかえりでは、スプリント中に設定したストーリーポイントに対して、計画と実績がどのように異なったのかをふりかえります。
特に重要なのは、何がその差を生んだのか、その要因をチーム全員で認識し、共有することです。計画通りに進んだかどうかよりも、進捗が遅れたり、予想より早く進んだ理由を理解することが次のスプリントに向けての改善に繋がります。
ステップ2:今回のスプリントで取り組んできたTryのふりかえり
Tryのふりかえりでは、このスプリントで取り組んできたTryについてふりかえりを行います。メンバーには、「Tryを守れていたか」という観点と「やってみて価値のあるTryだと感じたか」という観点で問いかけを行い、以下の3種類のTryに分類します:
引き続き次のSprintでも行うTry
引き続き行うが、より適切な文言に変更するTry
定着した もしくは 効果が感じられないために終了するTry
チームで成長していくに当たって、Tryをふりかえることは大切です。
Tryをふりかえることでチームの文化を形成していきます。
ステップ3:テーマ出しと優先度の決定
テーマ出しでは、このスプリントで発生した事実を思い出し、付箋に書き出してもらいます。その後の議論をより良いものにするために、できるだけ客観的な事実を付箋に書き出してもらうことをお願いしています。
全員が付箋を出し終えたら、付箋を出した人が出した理由を簡単に説明します。他のメンバーが背景を知ることで重要性を判断することができます。
最後にメンバー全員で取り扱いたい付箋に投票を行い、得票率の高いものから4つほどをピックアップして今回のふりかえりで扱うテーマとします。
ステップ4:起きた出来事の掘り下げ
前のステップで取り扱うことに決めた出来事ひとつひとつについて、内容の掘り下げを行います。
私は掘り下げの際に、出来事のタイプに応じて以下のように掘り下げる方法を変えることを心がけています。
具体的に発生した問題の付箋: 「どうしてその問題が発生したのか」という観点で掘り下げます。再発防止に向けたActionを作ることや、メンバー同士で問題の共有ができている状態を目指します。(個人を責める形にならないよう細心の注意を払います)
例:「本番環境にバグが見つかった」「〇〇において連携ができなかった」など
ニュートラルな事実の付箋: ポジティブな印象を持っているか、ネガティブな印象を持っているかを含めた感想をメンバーに問います。同じ出来事でも、メンバー同士で異なる印象や意見を持っていることが多いので、チームでその差を意識できるようになる状態を目指します。
例:「ペアプロが頻繁に行われた」「朝会の時間を今スプリントを〇〇にしている」など
うまく話の土台が合わないなと感じた時は、適宜チームメンバーの目線を合わせるワークを取り入れています。例えば「ありたい姿(ふりかえりカタログ コミュニティ版)」などのワークを用います。チーム全員が同じ目線で議論できるようになるのが大切です。
出来事について掘り下げを行なっていく中で、チームがより成長していくためのTryを作る必要があればTryを作成します。
ただし、Tryを作成することはこのフェーズでの目的ではありません。あくまで、メンバー同士で普段声に出せていない想いが共有されていることが、このフェーズでの目的だと考えています。
掘り下げ時のポイント
出来事の掘り下げを行なっていく中で、チームでより良い話ができるように、ファシリテータはチームをサポートする必要があります。
具体的には、私は以下のことを意識しながら、ファシリテーションをしています。
チームの会話・議論を促す
話が横道にそれないように傾聴し、それてしまいそうになったら元の問題に戻すように促す
参加者全員が話についていけるように、定期的に話の整理や、現状の論点の確認を行う
まず、メンバーの議論を促します。みんなで黙ってしまっては何も始まりません。
ファシリテータなので私自身の意見ばかりを述べるのは憚られますが、議論を促すためにあえて極端な意見を提案したり、反対意見を持っていそうな人に意見を伺ってみる、などをしています。
議論の脱線を防ぐためのポイント
そして、話が盛り上がってきても油断できません。議論はヒートアップしていき、ただ聞いているだけだと最初の議題から議論が離れていきます。確かに、枝分かれした話から本質的な議論が生まれることはあります。
議論が逸れてしまうと、メンバーの議題への集中が途切れてしまったり、元々話したかった話がうやむやになってしまったりするなどの問題があります。そのため、元の議論から離れてしまっているなと感じたら、議論に割って入り、その話を別の付箋に書いて横に見える場所に置いた上で、元の話に戻るようにメンバーを促します。
メンバー全員で議論するための工夫
議論が白熱していくと、話についていけなくなってしまうメンバーが出てくるかもしれません。
特に私たちのチームではリモートでふりかえりを行っているので、どうしても同時に話すことができるメンバーの数が限られます。そのため定期的に話を止めて「ここまでの話の流れ」と「現在の論点」を確認する時間をとります。
「ステップ4:起きた出来事の掘り下げ」に共通する目的としては、チームが解決するべき課題や集中して話すべきこと常に考えて、問いかけ続けることです。メンバー全員が頭をフル回転させて、チームが納得感を持って次に取り組むべきことに合意を取れるよう、ファシリテータとして最大限にサポートします。
ステップ5:次のSprintで取り組むTryの決定
出来事の掘り下げが終わったら、掘り下げの中で出てきたTryの候補の中から次のSprintで実際に取り組むものを決めます。Tryの数が多すぎて、出したものに意識が向かなくなることを防ぐため、数を4つ程度まで絞ります。数が多すぎるTryは意識できずに形骸化します。せっかくみんなで議論して決めたTryが、次のスプリント終了後に「そんなのあったね」となってしまうのはとてももったいないことです。
ステップ6:ふりかえりのふりかえり
最後にふりかえりのふりかえりを行います。メンバーに今回のふりかえりについての感想を書いてもらい、次回のふりかえりをよりよいものにします。
まとめ
今回書いたことは、毎回のファシリテーションで完璧にできているわけではありません。しかし、現状このような方法を目指して徐々に改善していく中で、ふりかえりが間延びしすぎず、メンバーが議論に集中できるようになってきていると感じております。
チームのふりかえりに正解はありません。これからも、さまざまなことを試しながらより良いふりかえりを目指していきます!
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次回もお楽しみに!