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気象予測の未来〜AIの活用で予報・予測はどこまで変わるか〜

2023年5月、これまで国以外は出せないとしてきた洪水や土砂災害の予報を民間事業者にも認める改正気象業務法などが可決・成立しました。
(国土交通省発表資料:https://www.mlit.go.jp/river/kasen/yosokusuii/pdf/gaiyo.pdf

改正法では、最新技術を踏まえた予報業務の許可基準の最適化や、防災に関連する予報の適切な提供の確保、予報業務に用いることができる気象機器の拡充などが定められています。

こうした中、スペクティは改正を受けて、2023年6月28日に、一般財団法人日本気象協会と、「気象予測の未来」をテーマにセミナーを行いました。

今回、スペクティ公式noteでは、時間の都合上セミナーでお答えできなかった質問や、セミナーを終えてのトークセッションをお届けします!

ぜひ最後までご覧ください。


【登壇者プロフィール】

気象業務法改正のポイント

近年シミュレーション技術の発達により、民間企業などでも精度の高い予報が可能となってきました。改正により、これまでより長時間先の災害リスクや、きめ細かな情報発信に期待がかかります。まずは、改正項目の中からスペクティの取り組みにも関わるポイントを3つお伝えします。

1、最新技術を踏まえた予報業務の認可基準の最適化

土砂崩れ・高潮・波浪・洪水(気象の予測結果により予測可能な現象)の予報業務の許可について、最新技術に基づく予測手法の導入による予報精度の向上を図るため、許可基準を新設し、気象庁長官が予測技術の審査を行います。
→これにより、審査で一定の技術を認められた民間の事業者は、気象予報士がいなくとも、洪水や土砂災害の予測を行うことが可能になります。

2、防災に関連する予報の適切な提供の確保

社会的な影響が特に大きい現象(噴火・火山ガス・土砂崩れ・津波・高潮・洪水)の予報業務について、気象庁の予報等との相違による防災上の混乱を防止するため、事前説明を行った者のみへの提供が許可されます。
→1により許可された民間事業者は、混乱を防ぐため、気象庁の予報との違いについて、事前にサービス利用者へ説明の義務が課されます

3、予報業務に用いることができる気象測器の拡充

予報の精度向上を図るため、気象庁長官の確認を受けた場合には、検定済ではない気象測器を予報業務のために補完的に用いることが可能になります。
→CCTVカメラ、人工衛星、IoTセンサーなど検定済ではない測器でも、確認を受けた場合に補完的に用いることができ、予測に用いるデータが増え精度向上が期待されます。

Q.気象業務法改正についての見解をお聞かせください

-丹治氏
今は、AIなどの精度も上がり、気象の物理的なモデルを使わなくても推察できつつあるので、結果的に良い方向に向かうと良いなと思います。
今後、参入してくる民間企業が増えますし、気象協会としても協業なども含めて気象だけではないアプローチをしていくなど可能性が広がると思っています。

-村上
"気象"という分野に関して、専門性は重要だと考えます。コンピュータで高度な予測が可能になってはきていますが、その結果に対して"気象"という専門領域で考えたときに、そこから次に何が起こりうるか、何が読み取れるかはというのは気象の専門家しか分かりません。改正されたからといって、気象会社の役割がなくなるわけではないですし、今後色々なデータやテクノロジーを使うことで予測の精度が上がることは良いことだと思います。

アンサンブル予測

現在、予測が難しい台風や長期的な予報には、アンサンブル予報という手法が用いられています。アンサンブル予報は、微小な違いのある複数の初期値で数値予報を行い、結果の平均をとることで精度の向上を図るというものです。

Q.気象予測は今後さらに精度が上がってくるのでしょうか

-丹治氏
現在さまざまな手法で予測を行っていて、的中率は9割前後と言われています。私は、これが頭打ちになるのではと思っています。
理由としては、気象予測の計算では地形や自然現象の全てを再現していることはできず、計算に入れる様々なパラメータを簡略にしている部分があります。極端なことを言えば、私1人が呼吸している空気の動きや体温は気象予測の計算に入っていませんし、自動車が動くことによって起きる風なども計算に組み込まれているわけではありません。そういうところで限界があるのではと思っています。今後は、その部分を気象以外のデータや技術でどう補っていくかが重要ですね。

-村上
気象に限らず、複数のデータを総合的に解析して、予測する場合に於いて、予測精度が概ね90%を超えてくると、それ以上の精度向上というのはとても難しいんです。ビッグデータ解析の予測の性質上、精度が一定の数値を超えるとそれ以上は精度がなかなか上がらなくなる。どんなに頑張っても100%にはならないものなんです。しかし、防災という領域では、9割という予測精度があれば、その予測を使って被害を抑えれば良いものだと思っています。

例えば最近よく聞く「線状降水帯」も、発生してからすぐに災害が起きるわけではなく、洪水や土砂災害が起きるまでそれなりに時間があります。だから、その猶予の間に避難するなど、どう行動を起こすかが重要です。
地震はいつ発生するかを予測することは難しいですが、気象はある程度予兆を掴むことが可能です。我々としては、SNSに限らず、気象データや自動車の走行データ、街中のカメラや人の動きの情報など、様々な情報を集めて、"いかに予兆を掴むか"、"正しい避難行動につなげてもらえるのか"が大事だと思っています。

データで変わる気象予測の未来

Q.今後社会全体の防災力を高めるために、気象予測をどう活用すべきか

-丹治氏
私たちが適切かつ迅速に気象現象を予測できても、人々がそれに応じて行動しなければ、災害を減少させることはできません。以前、吹雪の中で長距離ドライブを経験した人々へのアンケートを実施しました。その結果、吹雪に遭遇する可能性を事前に知っていた人の80%が普段どおりの準備でドライブをしていたことが明らかになりました。要するに、予測の精度が向上しても、人々が自分に降りかかる影響を感じ取り行動しなければ、意味がないんです。そこが今後の課題になってくると思います。

-村上
おっしゃるとおりで、何が起きるかの予測はもちろん、それに対してどう行動するかをシミュレーションすることが重要です。
大雨が降るということは周知されていたのに、大きな被害が出たり、亡くなる方もいたりします。そういう状況をいかなくすか、この先の予測される被害をわかりやすく見える化して行動につなげていくことこそが、スペクティがやるべきことだと考えています。日本気象協会さんのような専門性のある機関とも連携を進め、より良い未来を作っていきたいです。

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