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最新テクノロジーで挑む防災・危機管理の最前線

デジタル化の波は、防災領域でも大きなうねりとなって広がっています。
気候変動による自然災害の激甚化に加え、少子化や人手不足などに伴い、従来のやり方では対応しきれないような事態が増えるなか、防災分野におけるテクノロジーの活用は必要不可欠です。

今回は、デジタルツイン構築及びプラットフォーム開発を行うSymmetry Dimensions Inc. (以下、シンメトリー)と弊社(株式会社Spectee 以下、スペクティ)の取り組み事例、CEOの対談から、テクノロジーでどのように災害被害を最小限に抑えるのか、防災DXに何が求められ、どのような方向へ進むべきかを探ります。

都市のデジタルツインを活用した防災

デジタルツインとは、現実の世界から収集したさまざまなデータを、まるで双子であるかのように、コンピュータ上で再現する技術のことです。

デジタルツインは、工場の管理や製品の設計などをはじめ、さまざまな分野で使われていますが、シンメトリーが行っているのは"都市のデジタルツイン"です。
建物の情報や人流データ、気象データなどの情報を取得して都市のコピーを作り、防災や街づくりといった複数の領域で高度なシミュレーションを実現することができます。
例えば、デジタルツイン上でさまざま災害のシミュレーションを行うことで、災害に脆弱な地域を特定したり、日中や夜間の街の状態を再現した上で人々がどのように避難するかを予測したりすることが可能になります。

土砂災害の被害状況の把握に活用

バーチャル静岡イメージ

こうした動きは国や自治体でも活用が広がり、国土交通省では都市の3Dモデルをオープンデータ化するプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」を2020年に開始しました。2021年度には全国 56 都市の 3D 都市モデルのオープンデータ化が完了しています。
また、静岡県では他の自治体に先駆けて2020年から静岡県でレーザー測量を行った3次元的なデータ「VIRTUAL SHIZUOKA(バーチャル静岡)」を提供し、誰でも自由に利用できるようになっています。

では、実際にデジタルツインが災害現場でどのように使われているのでしょうか。
2021年7月3日、東海地方から関東地方南部を中心に記録的な大雨が発生し、静岡県熱海市伊豆山で大規模な土砂災害に見舞われました。

『VIRTUAL SHIZUOKAが位置特定や被害状況把握に使えるのではないか』

発生後すぐに、静岡県のまちづくり担当者を中心に、シンメトリーや土木、土砂災害の専門家、地質学やデータ分析の専門知識を持つメンバーによる「静岡点群サポートチーム」が立ち上がり、VIRTUAL SHIZUOKAや産官学のデータを活用し、被害状況の把握、分析が行われました。
その結果、「盛り土」の存在を突き止めます。

翌日以降はドローンを使ったレーザー測量も行い、最新のデータと比較しながら更に検証をすすめ、被害状況を把握。二次災害を防ぎながら救助活動や避難活動をどう続けていくのか話し合いが行われました。
従来は、報告するまでに1、2ヶ月かかるものが、デジタルツインを使ったことにより数時間で詳細を掴み報告できたといいます。

今、注目される「リアルタイム防災」

自然災害から人々の命や資産を守るため、政府や地方自治体はさまざまな手法で防災・減災に取り組んできましたが、昨今の自然災害の多発化・激甚化への対応には、限界が見えています。

これまでの事前にアクションを打っておく「事前防災」から、リアルタイムの状況を反映して動く「リアルタイム防災」へ、また、データをもとにシミュレーションを行って未来を予測し、対応を自動化する「データ駆動対応」へと進化をとげていく必要性があります。

"ARで被災した家屋の情報を可視化"

シンメトリーでは、国土交通省「Project PLATEAU」の実証実験に参画し、3D都市モデルを基盤とした、災害時の迅速な現状把握や救援活動の支援を行っています。

実証実験イメージ

土砂災害が発生した際、ドローンなどでスキャンし、点群データとPLATEAUを比較して被災地域の範囲を特定、住民基本台帳と紐付けることでどのような人が住んでいるのかを自動的に表示します。

実証実験イメージ

情報は現地で救助活動をする消防本部に共有され、ARで現実の空間に重ねあわせて見られるようになっています。これにより避難救助活動の迅速化を図ります。

"瞬時に浸水範囲を特定"

一方、スペクティでは2022年から「リアルタイム浸水推定図」の提供を開始しました。これは、水害発生時にSNSやカメラ情報から浸水深などを特定し、降水量や地形データを掛け合わせることで、リアルタイムに浸水範囲を推定するというものです。

予測が難しいとされている内水氾濫にも対応でき、写真やカメラから見える一部分の情報から、周辺地域の浸水状況を知ることができます。今後は10分後や1時間後などの最大予想被害範囲の予測も行っていく予定です。

CEO対談:自治体ごとのデータの更新が課題

左:Symmetry Dimensions Inc. CEO 沼倉正吾氏、
右:株式会社Spectee 代表取締役CEO 村上 建治郎

―ここからはCEOの二人に話を聞きます
―防災DXの課題はどこにあるとお考えですか?
沼倉氏:

PLATEAUのモデルは国土交通省が最初に作っていますが、その後のアップデートは自治体で行うことになっています。そういった面では、自治体が税金を投入してデータを作っていくので「実際に役に立っているのか」「どのようにデータが使われるのか」ということを証明し、住民の理解を得ることが重要だと考えます。
また、アップデートの頻度も自治体ごとに違っているので、サービスを実稼働した際に、誰がデータに対して責任を持つのか、更新に関する担保をどのように取っていくのかも課題になっています。

村上:
まさに沼倉さんがおっしゃるとおりで、街もどんどん変わっていきますし、作ったら終わりではなく、データの更新や、きちんとデータを取り扱える人材を確保するというのも課題の一つです。
自治体だけでなく民間もデータを持っている。そこをどのように組み合わせていくのか、どう取り扱ってどこに保管するのか、そのあたりを決めていかないと自治体も動きづらい部分もあります。なかなか簡単なものではないですね。

CEO対談:スタートアップだからこそ変えられる防災の未来

―防災領域のスタートアップの強みはどこにあると思いますか?
沼倉氏:
規模が小さい分、非常にスピード感を持って動けることかと思います。それぞれの会社が持つ得意分野を連携することで大きな力を発揮することができるんです。一方で、防災系のソリューションはビジネスにしていくことが難しい一面もあります。例えば24時間365日いつでも対応しなくてはいけないので人員の確保も必要ですし、間違いも許されない世界です。

村上:
そうですね。スタートアップに限らず大企業もそうなのですが、いつ起こるかわからない災害にどこまでコストを掛けていくのか、また、掛けるお金が税金になるため、防災の領域は事業化していくのが難しいです。
ただ、世界を見渡しても、気候変動によって災害リスクは高まっているので、しっかりとした技術やサービスを提供できれば、ちゃんとビジネスになると思います。スタートアップでも大企業に引けを取らない高い技術を持っているところも多くあります。
大企業では意思決定に時間がかかったり、入り込めなかったりする部分に、スタートアップがチャレンジできるチャンスがあります。特に防災領域においてはビジネス化しづらい反面、いろいろなアイデアと技術次第で入っていける領域でもあると思います。

―今後、両者が目指す世界とは
沼倉氏:
世の中には多くのデータがありますが、一般の人が全てを使いこなすのはなかなか難しいのも現状です。これを簡単に扱えるものにしていくことで、次はどうすればよいのか、どこに問題があるのか検討しやすい環境を作ることができます。これが我々が目指している世界です。今後もこういった世界を実現するために開発をしていきたいと思います。

村上:
スペクティは"危機を可視化する"というミッションを掲げてさまざまなデータを集め、付加価値をつけて提供するということを強み持っています。沼倉さんもおっしゃるように、例えば、災害対応の際は普段データを扱わない人が判断を迫られることもある。そういった際に分かりやすい見せ方が必要になってきます。シンメトリーさんのデジタルツインなどと連携をしつつ、分かりやすく可視化していき、災害被害が少ない世界を作っていきたいです。

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